薄暗くなった公園で俺はただ一人、ブランコに座って爪先をぼんやりと見ながらギイコ、ギイコとやる気なく漕いでいた。 サクモさんは凄い人だ。 強くてカッコよくて、二つ名を持つような誰もが憧れる忍びだ。 四代目ですら、サクモさんのことを「あの伝説の三忍でさえ霞むほど凄いんだ」と熱く語ってくれた。 だけど俺にとってはそれだけじゃなかった。 優しくて側にいるとほっとして。 それがくすぐったいような、胸が締め付けられるような。あの笑顔を向けられると、それだけでじんわりと嬉しかった。 膝の間をすり抜け、ぼたぼたと地面に落ちた水滴が数粒、黒く染みになる。それを爪先でごしごしと擦ってると、カカシの声が降ってきた。 「やっぱりここにいた」 「…なんだよ、家に帰ってろよ…あぁ、晩メシか。悪いけどサクモさんと二人で食ってくれ」 それで俺を一人にしてくれ。 俺は腕で両目をざっと拭き取り、顔をそむけながら答えた。 「ねぇ、落ち込んでるのって父さんが女とべたべたしてたから?父さんが母さん一筋ってイルカも知ってるでしょ。もう亡くなって十四年も経つのに」 「いいから帰れよ」 「…俺がくの一に誘われた時はほっぽって先に帰ったくせに」 「お前はいつでもヤりまくってるだろ、ガキのくせに。もう帰れって言ってんだろ!」 「今はイルカとしかヤってない!あれはイルカを身体だけでも落とそうと思ってテクを教わってたの!それにイルカだっていつも気持ち良さそうに啼いてるじゃないか!」 またいつもの不毛な言い争いになりそうだ。 そんな気力もなく、もう自分ん家に帰ろうと立ち上がろうとすると、鎖を握っていた両手が動かない。 「…カカシ。術を解けよ」 不機嫌さを丸出しにした低い声で言ったのに、カカシは無視して俺の足の間に膝を突いた。そして俺のズボンのファスナーを下ろして中からくたりとしたモノを取り出し、音を立ててしゃぶり始める。 「何やってんだバカカシ!こんな所でやめろよ!」 「だいじょーぶ。結界張ったから誰からも見えないし、聞こえないよ」 カカシが喋るために口を離すと、俺のモノから半透明な糸が繋がった。 綺麗な顔を汚すそれがあまりにも卑猥で、カカシの手の中で俺のは一気に熱と固い芯を持った。 「そんな事言ったってほら、これじゃ帰れないでしょ」 カカシはにんまりと笑うと、口と舌と手を使って急ピッチで追い上げてくる。 こうなるともうイく事しか考えられない。 必死に声を殺してたけど、口の中で先端までキツく絞り上げられた瞬間、真っ白な爆発が起きて「んぅ…あっ」と強い一声を上げてしまった。 射精の余韻でぼうっとしてる隙に、ズボンを下着ごとずるりと膝上まで引っ張り下ろされた。片腕で足をまとめて抱え上げられ、指でおざなりに解される。 「やめろ、こんなとこで……ぁああっ」 そして一息に貫かれた。 まだ成熟しきってはいないとはいえ、それなりの質量と熱が押し入ってきて、思わず大きな声が出た。 カカシが腰を叩き付ける度にブランコが不規則に揺れ、鎖がガチャガチャと音を立てる。 その時、ブランコのすぐ後ろの道路に男の話し声がした。振り返ると二人連れがなにやら喋りながら、こちらを通りかかろうとしている。 「カ、カシ……ひとが、く…るぅっ」 「結界張ったから大丈夫って言ったでしょ。それとも何、イルカが突っ込まれてヒィヒィ言ってるの、あの二人に聞かせたいの?」 カカシが俺の腰を片腕でしっかり抱え込んで、深く突き入れた状態で話しかけてきた。 今のこいつならホントにやりかねない。でも術と両腕とカカシの楔で完全に固定されて、逃げようにも逃げられない。 「…やめろ、抜けって…ぇああっ」 カカシが膨れ上がった先端で、一番感じやすい箇所を狙いすまして往復させた。 震えが腿から爪先まで走り抜ける。 「ふ…ぁ、も、そこ、やあっ」 「結界を解いてあいつらに見せつけてやろうか?イルカが四つも年下のガキにヤられて、こんなに感じまくってるよって」 「や、め…ぇあ、あ、ん…んんっっ」 仰け反った頭のすぐそばで、二人の男たちの笑い声が弾けた。 なのにそれは、すごく遠くの出来事みたいだった。 「…ひ、…ぁ」 勢いよく射精したことも。ギシギシ、ガチャンガチャンと音を立てるブランコも。 カカシが俺を折れんばかりにキツく抱きしめて「俺を…俺だけを見てよイルカ…!」と、食い縛った歯の隙間から吐き出したことも。 何もかも全部、すごく遠い出来事みたいだった。 ――いつの間にか、手が自由になっていた。 膝を突いて俺を抱きしめたままのカカシをぐいと押し退けると、ずるりと引き抜かれる感触に軽く身震いをする。 それから俺は身支度もそこそこに、自分の家に向かってよろよろと歩き出した。 カカシは、もう追いかけては来なかった。 自分の家の扉をガラリと開けて、習慣からただいまと言う。 父ちゃんも母ちゃんも、別々の任務で数日前からいなかった。今はそれがすごく有り難い。 とりあえず風呂場に直行して、シャワーでカカシが中に残した物を洗い流す。 ブランコの鎖を強く握ってたせいか、手のひらが真っ赤になって鎖の痕まで付いていた。 ……どうしてこんなことになっちまったんだろう。 昔は「イルカ、イルカ」と可愛くなついてくれてたのに。 俺がサクモさんを好きだって、カカシが気付いたから? …違う。もっと後だ。 カカシの左目が写輪眼になってからだ。 上忍になってからの任務でオビト君が亡くなって、カカシが大ケガをして一年近くも会えなかった。 カカシは今でも何も言わないし、あの時はサクモさんも「カカシを信じて待っててやってくれないか」と困ったように笑うだけだから、あんまり詳しく聞けなかったけど。 執拗に俺だけを求めるようになった今のカカシには、正直ついていけない。 それなのに身体だけは毎回カカシに応えてしまっている。 もう頭ん中がぐちゃぐちゃで訳が分かんなくて、がむしゃらに頭を洗ったけどあんまりスッキリとはしなかった。 そのままメシも食わずに布団をひっかぶったけど、なかなか眠りは訪れない。 浅い眠りに落ちるまで、とうとうサクモさんのことは一度も考えなかった。