教室 カカシは早く家に帰りたかった。 だが一人で家に帰っても意味が無い。目の前でひたすら赤ペンを動かしているイルカを見つめた。 夜も更けた職員室。イルカと自分以外誰もい無い。静かな部屋に只ひたすらペンを走らせる音が響いていた。 「ねー、イルカ先生。もう辞めて家に帰りましょうよ」 イルカの隣の席で詰まらなそうに言えば、イルカはまだです、と素っ気なく言い放つ。こっちを見もせずに。 家とはイルカの家を指している。自分の家には殆ど帰らなくなってしまった。一緒の部屋で暮らし寝起きしている。つまりイルカとはそう言う関係だ。 部屋が狭いとかアパートが古いとか、そんなのはどうでも良かった。イルカといる空間は何よりも心地いい。そう感じてしまったのだ。 使い古したクッションもイルカの匂いが染み付いついて綿がよたった感じがまた意外に使いやすい。 ご飯を食べた後イルカに膝枕をしてもらうのもなんとも言え無い幸せに満たされる。 ああ、早く部屋で2人で寛ぎたいな。 カカシは机の上に顎を乗せたままイルカの横顔を見詰めた。 「ねーってば。イルカ先生聞いてる?」 未だこちらを見ないイルカに声をかければ、ちら、とイルカはカカシを見た。その目はいかにも不機嫌さが込められていた。 「じゃあ先に帰ってください。俺はもう少しやる事がありますから」 突き離すような言い方も、冷たい。 一人で家になんて帰りたくなかった。イルカがいないならまだ諦めがつくが、今こうして目の前にいるのだ。恋人に向かって一人で帰れなんて何てツレない台詞なのか。 「嫌ですよ。俺はイルカ先生と一緒に帰りたいんです」 「でも俺いいましたよ、時間がかかるって。待てないんだったら帰ってください。これが終わったら教室に忍具を運びますから」 カカシの不満に気がつかないふりをしてるのか、突き放したように言い切られてカカシは眉を顰めた。 「えー、そんなの明日の朝やりゃいい事でしょ。それに忍具管理も用意も全部生徒の仕事だよね。イルカ先生は甘やかしすぎなんじゃない?」 ついそんな言葉がついて出た。子供のように拗ねた声にイルカはペンを止める。カカシに向けたイルカの目は少し鋭くなっていた。 「朝一の授業ですし、使うのは最年少クラスなんです。一応手入れがされてるか確認もしたいんです。何かあったら遅いんですよ」 至って真面目な反論をカカシに分からせるようにか、低い声で言った。 これ以上言い合っていても仕方がない。 「そうですか」 カカシは諦めて口を閉じると、頬を机にぺたりとくっ付けてイルカを見上げた。 イルカを不機嫌にさせたら家でいちゃいちゃしてくれなくなってしまう。 力尽くでしてもいいのだが、やっぱり同意の元でしたい。 カカシは軽くため息を零してイルカが終わるのを待った。 イルカは教室に入ると教壇の電燈をつける。辺りを見渡しながら溜息を零した。 「あいつら掃除適当にやって帰ったな」 カカシも教室に入り机の上や床にに残されたゴミを見た。 明日サボった生徒にやらせりゃいいのに。甘いんだよね。 口に出したりはしないが。カカシはブツブツ言いながらもゴミを拾い上げるイルカを見て思った。 イルカは本当に真人間だ。教職に向いているのはよく分かるが、恋人と一緒にいる時くらいは先生の顔を見せずにいて欲しい。 イルカは床に座り持ち込んだ忍具を一つ一つ目を通している。 当たり前にこっちを見る事はない。 カカシはパチンと電燈のスイッチを切る。イルカが何事かと弾かれたように顔を上げた。 背後に近づくと、抱きこむようにイルカの身体に腕を回した。 「わっ、え?なんですか?」 抱きつかれると思っていなかったのか、多少の驚きを見せ首を捻りながらこっちを見ようとした。 首元の柔らかい皮膚に唇をあてて、イルカの匂いを十分に嗅ぐ。イルカの身体がピクリと反応して、ぐいと腕でカカシを押しやろうとした。 「やめてください!」 苛立ちを含むその声は本当に嫌だと分かる。それが余計に面白くない。 更に強い力でイルカを封じ込めて、耳の裏を舌で舐める。 「っ…やめ…っ」 イルカがぐっと歯を食いしばったのが分かった。 「いい加減にしてください…っ。嫌だって言ってるでしょう?」 首を捻りながら訴えるイルカの顔は、眉間に皺を寄せて睨んでいる。実に可愛くない。 身をよじろうとするイルカに構わず、片方の手をベストの中にスルリと入り込ませた。上へ上へと探りイルカの突起を探り当てた。指が触れた途端イルカがひゅっと息を飲んだ。服の上から構わず乳首を指で摘んで動かせば、イルカはびくと跳ね上がり身体を強張らせた。指の腹で優しく潰すように擦ると、服の上からでも分かるくらいに突起は更に硬く尖り出す。 「…んっ…やだ…っ」 「イルカ先生の硬くなったね。…感じるの?」 からかうように言えば、イルカの顔がかぁと赤くなる。 「…んじてませんっ」 それでも頑なに首を振るイルカに、意地悪く乳首を爪で弾くと鼻にかかった甘い声がイルカから漏れた。 「ぁっ…っ」 そのままスボンに伸びたカカシの手に驚き、イルカはカカシの手を掴んだ。 「やめてください!…こんなことろでっ」 イルカからしたらただ単に嫌だと言いたかっただけだろう。だが、その言葉はカカシをひどく興奮させた。嫌がるイルカを無視して器用にベルトを緩めると、隙間から下着の中に手を入り込ませた。 「カカシさん!本当にやめっ…」 カカシを掴む腕に力を入れ抗おうとしているが、耳の中にネロリと舌を入れられ、ビクビクと身体をしならせた。その隙にカカシの手はイルカの肌を楽しむかのように摩り、足の付け根を撫でる。そこからすでに硬くなり始めているいるイルカのものをぬるぬると扱いた。 「んっ…んっ…」 今は静まり返ってはいるがイルカが生徒と共に毎日授業を行う場所。その場所でイルカは今身体を弄られている。 そう思うだけで変な優越感が込み上げカカシは口の端を上げた。 「感じてないなんて嘘じゃない」 「ちがっ…」 先の割れ目を指で擦れば、たちまちイルカの腰が揺れた。逃れようと腰を後ろに浮かせば、カカシの熱くなったものが布越しに触れた。 「あっ……っ」 驚きに声を上げて息を飲む。カカシは逃げた尻を掴んで、ぐいと自身を押し付けた。 恥ずかしさに眉を顰めているのが分かる。その顔は可愛いとしか思えない。イルカを扱いていた手を離し、奥まった場所を指で触れた。既にそこは熱く、難なく濡れたカカシの指を飲み込んでいく。根元まで咥えた所で、内側で円を描くように指を動かした。まだ一本しか挿れていないのに、中は熱く指に吸い付いてくる。 イルカは短く息を吐いて、刺激に耐えているようだった。 「抜いて…っください…」 この状態でまだ拒もうとするのが不思議でならない。身体はこんなに素直に反応を繰り返していると言うのに。背後から伺い知れるイルカの頬は紅潮し口元が緩み、そこからは荒い息を吐いている。もっと厭らしい顔をさせたい。 カカシは中で動かしていた指を止め、ゆっくりと抜き差しを始めた。くぷくぷと濡れた音を立てながら、指を2本に増やし焦らすようにゆるゆると動かした。その度に厭らしく腰が揺れる。嫌だと言いながらも身体はどうしようもなく感じてしまっているらしい。 「はっ…んっ…」 声を出すまいとしているのか、息を詰めては小さく声を出した。 カカシの腕を掴んでいた指に力が入る。 「気持ちいい?このまま指でいく?」 「やっ…」 「じゃ、どうしたいの?」 耳元に囁けば身じろぎしながら、ギュッと目を瞑ったのが分かった。 いつもなら聞くまでもなく自分の猛ったものを挿入しているが、今日は意地悪くイルカの言葉を待った。 その間にも指はずっと出し入れを繰り返している。 「ほら、ちゃんと言わないとこのままだよ」 「…てくださっ」 絞り出すような声をイルカは出した。 「ちゃんと言って」 「い…挿れてくださいっ」 恥ずかしさよりカカシとしたいと、その言葉をイルカから引き出して満足すると、カカシはゆっくりと指を抜いた。 「あっ…」 鼻にかかった甘い声を漏らす。 背後から抱いていた腕を離すと、イルカを自分へ向き直し抱き寄せ唇を吸った。イルカの柔らかい唇を思う存分に味わい離すと、イルカは既に蕩ける目で物足りなそうにした。あれだけ嫌だと言っていたのは頭の片隅に追いやってしまったのだろうか。カカシは誘われるように薄く開いた口から舌を差し入れる。イルカも自ら舌を差し出した。カカシの手は再びイルカのスボンの中に入り、尚物足りなくひくひくしてる穴を指でなぞり、欲を高めるように既に解かされた場所へ指を潜り込ませた。 「んっ…んっ…」 キスを交わしながら物足りない刺激にイルカは腰を動かす。カカシの長い指が、イルカの動きに合わせて挿入された。 「ね、…もう、」 焦らされたイルカは涙目でカカシに訴えた。すっかり勃ち上がった熱は先から濡れそぼり下着をじんわりと濡らしている。 「じゃあ舐めて」 耳元で囁けば分かりやすいくらいにイルカの頬が赤くなった。 カカシが立ち上がり、生徒の机に背を預ける。イルカは困った風に眉を寄せながらも、しゃがみ込んでいた身体を起こし膝立ちになると、カカシのズボンに手をかけた。カチャカチャと金属音を鳴らして寛げる。既に熱く張り詰めていたカカシのモノを取り出した。コクリと喉を鳴らしたのがカカシから見て取れた。潤んだ目で少し空いた口内からは赤い舌がちらちらと見える。イルカの頭を優しく撫で、 「しゃぶって」 と強請ると、イルカは素直に従い口を開け含んだ。 「ふ……ん、」 イルカがいつも生徒達と授業をしている場所で、イルカが自分のモノを口にしているかと思うと、異常なくらいに興奮した。先走りとイルカの唾液で水音が教室に響き渡る。 さっきまであんなに可愛くない態度を見せていたのに。一生懸命に頬張る姿は何て愛おしいのか。長い指でイルカの頭を撫でると、薄っすらと目を開け、黒い瞳と目が合った。それだけで背中にゾクリと甘い痺れが走り、自分のモノが一段と大きさを増した。 ヌルリと口から出して先端を舐めようとしたイルカの赤い舌を見た瞬間、射精感を感じ我慢する間も無く白濁が飛び散り、イルカの顔や顎にかかった。 我慢出来ると思っていたのに。 一瞬の出来事に余韻に息を荒くしながらもカカシ自身驚いていた。 イルカも目を丸くして固まったように動かない。 さすがにイルカも怒るに違いない。焦らすだけ焦らして顔にかけてしまった。 イルカは袖で顔を拭うと、 ごめんね、と口を開こうとしたカカシの亀頭を咥え吸い上げ、カカシは思わず短く声をあげた。 「っ……イルカ先生…」 軽く顔を顰めれば再び口に含まれ扱かれた。イルカの口内はとても熱い。ぬるぬると濡れた唇が滑ると気持ちがいい。達したばかりだと言うのに硬さを取り戻していた。 「後ろ向いて」 そう告げると、尚もカカシの性器を舐めようとしていたイルカの腕を取り立たせる。 「あっ、…カカシさん」 少し乱暴なカカシに驚いた顔をしたが、余裕がなくなっていた。イルカの背を手で机に押さえつける。 「尻、出してください」 机に両腕を置かせ、自分に尻が出るようにするとズルリと下着ごとズボンを剥く。張り詰めた熱をあてがうと、直ぐに熱く解かれた場所にめり込ませた。ぴっちりと張り付く壁に己の性器をゆっくりと押し込む。 「んっ…は……」 根元まで飲み込むと、イルカが息を吐き出した。そこからゆっくりと動かした。自分の突きやすい位置に固定すると、一気に突き上げる。 「あっ!…ん…っ」 イルカの身体が前に動き机が音を立てる。抜き差しする動きに合わせてイルカの腰が揺れる。 ぐしゅぐしゅと結合部分から水っぽい音を立てながら出し入れを繰り返した。 突き上げる度に締め付けられるそこは堪らなく具合がいい。うっとりと眉をひそめ目を瞑りながら心地よさに酔いしれた。 イルカもいつも以上に興奮をしているのか、夢中になりながら腰を動かしている。 「ぁあっ、…アッ!….カ、カシさんっ」 抑えきれなくなったイルカの声は大きさを増す。 自分達以外帰っていないと分かっているが、その声は廊下まで響いているだろう。 「センセ…声…」 カカシは屈みこんでイルカの耳元で囁いた。 「ひゃ、ん…だって…」 揺すり上げながら言うと、イルカは首を捩りカカシを見る。涙声を絞り出すように言った。止めて欲しくないと強請るような顔を見せられ、それがひどくソソる。息を荒くしながらカカシは熱の上がった項に唇を押し付けると、最奥に激しく突き上げた。 「あぁっ!……あっ…あ!」 机がガタガタと鳴り、イルカは上半身を机につき伏して声を上げる。 生徒の机に爪を立てて。 「大きな声出して…イケない先生だね」 机に食い込ませてるイルカの手にそっと重ね指を絡める。わざと辱めるように言えば、一瞬声を飲み込むが、直ぐに緩む口からは声が漏れ出す。 「言わ、…ない、でっ…」 羞恥に身体に熱を集めながらもグッと唇を噛み締めたのがわかった。 イルカの手から指を抜き、先走りで赤く濡れそぼっている性器を扱き揺すれば、白濁を放ちながらイルカは果てた。 中を絞られ、カカシはキツく眉をひそめ射精をやり過ごすと、熱い息を吐き出したイルカの腰を持ち直して激しく動かし、一番奥まで突き上げる。2回目となる精液をイルカの中に吐き出した。 翌朝、イルカは生徒もまだきていない中、教室にいた。隣にはカカシもいる。 珍しいとも言えるカカシの早起きは、勿論イルカに起こされ連れてこられたのだが。 昨日はイルカもぐったりとして忍具点検もそこそこに、汚れた床や机を掃除して家路に着いていた。 全てがなあなあで帰る羽目になったのは多分じゃなくとも自分のせいだろうな、と欠伸を噛み締めながらも素直に応じて、点検を手伝っていた。 朝日が清々しく教室を照らして開け放たれた窓からは風が教室を通り抜ける。 昨夜廊下に響く程の声を上げながらここで交わったなどの余韻は微塵も感じさせない。 汚した場所も、先ほどイルカが改めて雑巾で水拭きをしてピカピカにしていた。 改めてイルカを見るとキリとした横顔は既に教師の顔だ。 今ここにいるのは自分の恋人ではなく、教師のイルカだと、少し残念な思いが出てしまう。 「あ、先生!」 一番に入って来た女子生徒が声を上げた。走ってきたのか、頬っぺたが少し赤い。 「一番だと思ったのに~」 ぷうと頬を膨らませた子を見てイルカが笑った。 「今日は俺が一番だったな!」 イルカが頭をぽんて軽く叩く。その生徒は嬉しそうな顔をしてイルカを見上げた。 ふとカカシを見て少し驚いた顔をした。警戒したのが分かり、内診苦笑いをする。 そりゃそうだろう。顔が殆ど隠れた見知らぬ男が教室にいるのだから。子供ならば誰だってそうなる。 ニコと笑いかければ、サッとイルカの背後に隠れて、カカシを隠れ見た。 「なんだ、挨拶をちゃんとしろ。今日の授業の準備を手伝ってくれたんだぞ」 イルカの袖をぎゅっと掴み顔半分のまま見られ、流石にカカシも苦笑いを零した。 「いいですよ、イルカ先生。怯えちゃってるし」 頭を掻いて言えば、 「あ…ありがとう!」 大きな声でお礼を言われ、女の子はそのままたーっと走って教室から出てってしまう。 少し呆気に取られていると、イルカがふふ、と小さく笑い、顔を向ければイルカは笑いながら、すなまそうに鼻頭を掻いた。 「恥ずかしがり屋なんですよ、あの子」 すみませんと言いながらもその顔はとても嬉しそうだ。昨日ほどではないけれど、いかにも先生らしい言葉に何故か生徒に羨ましさを感じてしまう。 「でもあの子、大きな声で言えたじゃないですか」 カカシが褒めると思っていなかったのか、驚いた顔を見せ、すぐに笑顔を零した。 「はい」 目の下に皺なんて作って笑う顔は何とも言えず可愛い。さっきまでの焼きもちなんて吹き飛んでしまう。 「イルカ先生の昨日の声には負けますけどね」 明らかにわざと言った意地悪いカカシに、かぁと頬を染め責める眼差しを見せた。 「もう、やめてください」 赤らめたままのイルカは誰もいない教室だと言うのにきょろきょろと辺りを見渡して。 「でも可愛かったですよ」 更に言われて、とうとう耳まで赤くなる。にゅっと伸びた手がカカシの耳を引っ張った。 「いたたた、痛いですよ」 すごい忍びであるはずのカカシにも容赦ない力を込めている。きっとこんな顔を彼にさせるのはイルカぐらいだ。 痛がりながも顔を綻ばせるカカシに口を尖らせた。 甘いなあ。カカシはそう思う。 教室で残業そっちのけであんな痴態を敷かれたのに、それでもきっともうこの人は許している。それを証拠に。 ごめんね、とカカシが素直に謝ればそれだけで耳から手を離し、じゃあ今日はラーメン奢って下さい。餃子付きで。なんて言う。 ラーメンと餃子で許してくれるなら幾らでも奢るのに。 やっぱりこの人は甘いなあ。 カカシが微笑めばイルカも恥ずかしそうに微笑んだ。 窓の外から子供達の声が聞こえてくる。登校時間だ。 「先生おはよー!」 さっき出て行った女の子が友達と手を繋いで入って来た。 「じゃあね、先生」 イルカに声をかけカカシは窓から外にある大木の幹に飛んだ。女の子が目を丸くしてカカシを見ている。カカシはニコと笑いかけ軽く手を振れば、女の子は恥ずかしそうにモジモジとする。 あどけない表情に顔を緩めれば、ベェと舌を出されイルカに飛びついた。 私のなんだから そんな声が聞こえた気がして、苦笑いを浮かべた。 どんなに小さくても女は女なのだ。 仕方ない。今だけイルカ先生は貸してあげる。 カカシは女の子にそう目配せしウィンクする。 そんな2人を不思議そうな顔でイルカが見ていた。 <終>