幸運な破廉恥 イルカ先生が足を崩して座って、テレビを見て笑っている。 時々俺の頭が揺れるのは膝枕をしてもらってるからだ。 小刻みに頭を揺らしながらイチャパラのページをめくってると、イルカ先生が笑いながら膝を大きくずらしたので俺の頭が転がり、顔が横向きになって位置がずれた。 ―――イルカ先生の股間に。 ぐりゅ、と何か柔らかい感触が頬骨の辺りに響く。 「ひゃわ!」 イルカ先生が変な声をあげた。 「あ、ごめん」 反射的に謝ったけど。 今のって、もしかして何かに当たった?…いや絶対ナニかに当たったよね。 「あ、や、いえ…」 そっと視線を上にずらして視野の端っこでイルカ先生を見ると、ちょっとだけ挙動不審になっている。 たぶん痛いというより、意識してしまったんだろう。ちょうど俺の顔を先生のアレに押し付けたみたいになったから。 角度によっては少し刺激も与えちゃったかも。心なしか頬が赤い気がする。 俺は平静を装いながらまたイチャパラをめくり始めたけど、わずかに瞳孔が開き、心臓はバックバクいっていた。 (こ、これが噂のラッキースケベというヤツか…!) 自来也先生の傑作『イチャイチャ ハプニング』で読んではいたが、意図せずにちょっとエッチなハプニングが起きるのは、なんと甘美な瞬間だろう! いつも俺が仕掛ける色々なあれこれの時とは違って、羞じらいながらも何事も無かったかのように取り繕う先生の姿が初々しい。 たまらず今すぐにでも先生を頂こうと思ったが、ふと思いついた。 今ここで始めてしまうと、イルカ先生の中に『ラッキースケベ→セックス』という図式が出来上がってしまう。 いや今の一回だけでは結び付けないだろうけど、さすがに二度も三度も続いたら。 間違いなく何度目かには警戒されてしまう。 なぜそんな事を考えたかというと、俺はとことん味わうことに決めたのだ。 あの甘美な瞬間を。 次の日、俺は七班の草むしりの監督をするために木の上で寝そべっていた。 広大な屋敷の庭なので、均等に散らばった三人はケンカをすることもなく、黙々と雑草を抜いている。今の所は。 土遁と風遁を使えば楽なのにな~と思いながらも口は出さず、ポケットから出した小さなノートに、重要な懸案事項を書き出していく。 【ラッキースケベの定義と実行要項】 ・あくまでも自然な偶然を演出 ・実行後にセックスを意識させる行為は厳禁 ・不自然にならないよう、最低でも一ヶ月は期間を空ける ・任務を挟んで更に不定期に間隔を空け、法則性を排除 ・イルカ先生に直接的依頼は不可。間接的依頼は可 ・状況を作り出すためなら術の使用もあり ・状況を作り出すためなら他者の介入もあり 次に実行したいラッキースケベの具体案を挙げていく。 主に『イチャイチャ ハプニング』を手本として、いくつもの状況とそこに至るまでの手順を並べていった。 「あー!サスケずるいってばよ!なに術使ってんだよ!」 「術の使用は禁止されなかった。思いつかないお前が悪いんだウスラトンカチ」 「なんだと~!」 遠くで二人のケンカが始まる。 (あ~あ、やっぱりケンカになったか) 俺はほどよい所で仲裁に入るため、ノートを閉じた。 そして、俺の壮大な計画が始まった。 最初の純粋なラッキースケベの後から一ヶ月が経った。 そろそろ頃合いかと、リストのトップを実行に移す。 季節は初夏なので、暑がりなイルカ先生は風呂上がりに腰にタオルを巻いただけの扇情的な姿で居間に登場するのだ。 その先生とさりげなくすれ違うと、タオルの裾に極細のチャクラ糸をくっつける。 それからイルカ先生の下半身を正面に拝めるであろう、卓袱台の前のベストポジションに陣取った。 そして糸を初めはゆっくりと、そして先生が体をこちらに向けた瞬間、一気に引っ張った。 すると挟み込んでたタオルがほどけて、 『湯上がりに腰に巻いたタオルが落ちる』。 「うお!っと」 先生が下を見た瞬間、俺は目をカッと見開き、その光景に釘付けになった。 足の間のY字の中心には、黒々とした茂みが力強く存在している。そしてその合間にのぞくのは、ほんのりピンクがかったイルカ先生のイルカ先生… (アレを今すぐしゃぶって舐め回して、艶々した先端に吸い付きたい…!) 俺は反射的に飛び掛かりそうになったが、チャクラを総動員して体温・血圧・心拍数・呼吸数の上昇を抑え、じっと耐えた。 イルカ先生が屈んでタオルを拾う。 その時、開かれた膝の間に柔らかくふっくらとした袋を認め、竿がぶらぶらしているところもしっかりと目に焼き付ける。 それから意識的に眼から力を抜き、サッと目線をずらして、イルカ先生が顔を上げて立ち上がる頃にはテレビを眺めていた。 「へへっ」と一人照れ笑いをしながらタオルを巻き直す先生を横目で確認しながら、俺はじっくりと成功を噛み締めていた。 それからも俺は十分な間隔を置いて、ラッキースケベリストを実行していった。 『振り向きざまにイルカ先生とキス』 唇にキスだと作為的過ぎるかと、耳にキスに変更する。 『スカートが風(もちろん風遁)でまくれ上がってパンチラ』 これはさすがに浴衣に変更した。パンチラを確実に拝めるよう、神社の階段の先生より五段下で待機。 成果は俺があげたブルーの細いボーダーのボクサーショーツ。 『Tシャツ(白に限る)に水をこぼして乳首を透けさせる』 大成功。あまりにもエロチックで、危うくむしゃぶりつくところだった。 『ナルトを使い、イルカ先生の顔を白いバニラアイスまみれにする。アイスが顎まで伝うと尚良い』 これも大成功。顔に白い液体はいい。色々妄想が羽ばたく。 『手の甲で乳首をアンダー越しに掠める』 台所で料理中、振り向き様に醤油の瓶を持った手を、イルカ先生の胸に沿うよう動かす。 手の甲に浮き出た関節と指を使って絶妙な力加減で掠めたので、先生がびくんと跳ねた。ちょっと感じたのか。 『立ち上がる瞬間を合わせて、掃除をしてる先生の尻に顔を埋める』 これは下手に躊躇わず、思い切りよく埋めた。ちょうど左右の尻の間を持ち上げるように埋まり、程よく力の抜けた尻の筋肉の感触を存分に堪能。至福。 等々。 俺はノートに記したメモを見て、ラッキースケベの記憶を何度も味わった。 ハプニングの難易度を徐々にグレードアップさせ、順調に消化していったリストは十を超えていた。 その度にイルカ先生は慌てて赤面したり、ビクッと跳ねたり、あるいは何も気付かずにやらしい顔を晒したりしてくれる。 あとは心の底からやりたいラッキースケベNo.1 『スカートの中に頭を突っ込む』 だが、まず普通に考えても非現実的で難易度がSランクな上に、イルカ先生を女装させる等、何かと作為的過ぎてラッキースケベの状況作りに無理がありすぎるので、泣く泣く諦めることにする。 そうやってちょっとずつ、ちょっとずつ計画を実行して、いつしか数年が経った。 その間にはペインが攻めて来てちょっと死んでたり、大戦でちょっと死を覚悟したりと色々あったが、ラッキースケベへの情熱は全く薄れる事はなかった。 そして俺は、六代目火影に就任した。